【壁紙のキホン #9】多彩なデザインを表現する輸入壁紙の印刷技法
こんにちは。テシードです。
壁紙のキホン第9回目の配信です。
輸入壁紙の魅力はデザイン表現の幅広さや豊かな質感ですが、
今回はそれを生み出す製造工程の部分にスポットを当ててご紹介したいと思います。
壁紙はベースペーパーに柄を印刷し、作られています。
壁紙の印刷には基本的に版とインクが必要です。
柄のリピートは版で決まり、インクは風合いを出すために最も重要です。
また、版には、凹版(おうはん)と凸版(とっぱん)があり、「インク」にも種類があります。
(画像:イギリスのSURFACE PRINT工場の風景)
印刷技術やインクの特徴を生かして個性豊かな壁紙のデザインが表現され、壁紙が生産されています。
壁紙選びの際には、輸入壁紙ならではの繊細なプリントや表現方法の美しさを楽しんでみてはいかがでしょうか。
多彩なデザインを表現する輸入壁紙の印刷技術
今回は3つの印刷技術にスポットを当ててご紹介します。
特に最初にご紹介する「サーフェスプリント」は日本にない印刷技術で
ハンドメイドのようなインクの風合いが美しい壁紙を生み出すことができます。
輸入壁紙を選ぶポイントにもなるのではないでしょうか。
ぜひ参考にしてみてください。
サーフェスプリント
サーフェスプリントは1838年に発明された最古の機械式印刷技術。
印刷方法は凸版印刷です。
サーフェスプリントの機械は、ブロックプリントを量産化するために開発された機械で、
風合いや印刷の仕上がりはブロックプリントに非常によく似ています。
【サーフェスプリントの機械】
画像:イギリスのWallpaper Factory「Anstey」
【ブロックプリントの版】
画像:イギリスのWallpaper Factory「Anstey」
ブロックプリントは最も歴史が古い印刷技術で、木片に手彫りで版を作り、
判子の要領でインクに付けては壁紙に隙間なく、押していく手法です。
かすれやにじみで一つ一つ個性や味わいが出ます。
サーフェスプリントの特徴
インクは水性インクで、乾燥スピードが遅いため、隣り合う違う色のインク同士がにじみ、
柔らかい表情に仕上がります。
【マメ知識】
フレキソ印刷機やグラビア印刷機が誕生してきた現代では多くのサーフェスプリントの
機械が廃棄されてしまっており所有している企業は世界で数社となっています。
弊社の取扱いブランドでは、SURFACEPRINTCOMPANY(1838WALLCOVERINGS)、 YORK 、
AltaGamma Modern Livingが所有しています。とても希少な印刷技術なのです。
サーフェスプリントの壁紙の例①
品番:75690712
フランスのアール・ヌーヴォーの旗手である建築家でありデザイナーの
エクトール・ギマールにオマージュを込めたデザイン。
インクだまりや滲みがアートのよう
サーフェスプリントの壁紙の例②
品番:432-96
マルメロ(セイヨウカリン)の果実や花が描かれた優しい雰囲気の壁紙。
まるで筆で描いたかのような風合いを楽しめます。
同調(どうちょう)プリント
ビニール製壁紙に柄をプリントし、柄に合わせてエンボス加工を施したもの。
織物調などの無地系から、花柄などのデザインがあります。
日本にもある技術ですが、日本製のものよりも豊かな色彩表現ができるのが輸入壁紙の特徴です。
同調プリントの壁紙の例①
品番:38703-1
ドイツの壁紙ブランドAS CREATIONとのコラボレーションで制作されたヴェルサーチのコレクションに収録。
立体的で鮮やかなプリントが魅力。
(防火性能:非防火 シックハウス基準 F☆☆☆☆)
同調プリントの壁紙の例②
品番:25610
イタリアの大手壁紙メーカーが手がけるクリムトの作品をモチーフにした壁紙。
クリムトらしい装飾的な幾何学模様を壁紙のデザインに。
(防火性能:非防火 シックハウス基準 F☆☆☆☆)
部分によって異なるエンボス加工を施した複雑なデザイン
同調プリントの壁紙の例③
品番:24836
シルクのような上品なデザインもあります。
布のようなテクスチャーと優雅なデザインが落ち着いた空間を演出します。
デジタルプリント
デジタルイメージを直接様々なものに印刷する技法。
デジタルソースからレーザープリンターやインクジェットプリンターを使って印刷します。
従来の印刷技法に比べてコストは高いのですが、印刷版を作る従来の手間が省け、小ロットで制作できます。
インクジェットプリンターとレーザープリンターがあります。
デジタルプリントは、日本国内でも普及しつつある印刷技法です。
海外メーカーではビニール壁紙だけでなく、不織布や自然素材のベースペーパーにデザインを印刷し、
より風合い豊かな壁紙を製造しています。
印刷の特徴
画像データを基に印刷する方法です。色や柄の繰り返しに制限がありません。
デジタルプリント壁紙の例①
品番:120/6018
不織布にプリントされたやさしい風合いの壁紙。
同じデザインですが、光沢のある不織布ベースに印刷されています
品番:120/6023M
デジタルプリント壁紙の例②
品番:25680
クリムトの作品「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I(1907)」をモチーフにしたゴージャスな壁画。
(防火性能:非防火 シックハウス基準 F☆☆☆☆)
織物のようなテクスチャーのあるビニール壁紙に印刷し、より迫力のある仕上がりに。
デジタルプリント壁紙の例③
品番:GA4 9400
シルクとラミネート糸で作られた上質な壁紙。
ARMANI/CASAの壁紙コレクション「PRECIOUS FIBERS 2」より。
大胆で自由なデザインを表現できるデジタルプリントの壁紙のバリエーションは年々増えてきております。
壁画タイプの商品も人気で、中には壁画のみ収録したコレクションも発売されています。
その他の印刷方法について
その他にも下記のような印刷技術があり、表現したい壁紙のデザインや用途、
その他様々な目的によって使い分けられています。
フレキソプリント
凸版印刷方式の一つ。サーフェスプリントよりも費用対効果が高い印刷方法。比較的柔らかいゴム製のシリンダーを使用し、インクトレーからローラーにインクが転写され印刷する仕組み。
■印刷の特徴
にじみが起こらず均一に印刷される。インクは薄くのせるので平坦に印刷される。
ビニル袋やダンボールへの印刷にも使われる印刷方法。
グラビアプリント
凹版印刷。 現代の印刷機の中で最もスタンダードな印刷機のひとつ。■印刷の特徴
高速での大量生産に向いている。表面を拡大する細かい点になっている。
グラデーションを表現するのに適した印刷方法。商品ラベルの印刷などにも使われる方法。
ロータリースクリーンプリント
孔版(こうはん)印刷。現代の印刷機の中で最もスタンダードな印刷機のひとつ。版がメッシュのシリンダーになっているので、メッシュの粗さによってインクの量等調整が可能です。
■印刷の特徴 シルクスクリーン印刷の進化版。シルクスクリーンの風合いを保ちつつ、
連続して印刷出来るのでコストが抑えられます。
まとめ
今回は壁紙の印刷技法についてご紹介しました。
壁紙を選ぶ際には柄だけでなく、ベースとなっている素材の質感やプリントの風合い、
手触りなども見比べてみるのも面白いです。
さて、今回は壁紙のキホン第9回目をお届けしました。
もし1回目から今まですべてお読みいただいている方がいらっしゃったら、輸入壁紙のことをたくさん知っていただけているのではないかと思います。
まだまだ奥が深い輸入壁紙の世界を今後も楽しんでいただけると嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。