貴重な「金唐紙(きんからかみ)」を発見!
先日、こんな驚くべきことがありました。
なんと、テシードの隣のビルに金唐紙が貼られていたのです!
偶然にも、代表の江面がビルのオーナー様より壁紙について相談を受けて下見に行き、金唐紙を発見しました。
そのタイミングはなんと解体の1週間前。
解体前に金唐紙を自ら剥がしに行き、引き取ったとのこと。
何も知らなければ、そのまま捨てられてしまうところでした。
さて、「金唐紙って何?」と思われる方へ簡単に説明いたします。
金唐紙とは?
17世紀半ばの江戸時代にヨーロッパの宮殿や寺院などの壁や天井に使われていた装飾革「金唐革」にならい、
日本の和紙を加工して作ったのが「金唐革紙(きんからかみ)」。
1873年のウィーン万国博覧会に、日本橋にあった竹屋商店が、大判の「金革壁紙」を出品したのが日本の壁紙製造の始まりと言われています。
明治31年(1897)、日本の芸術産業として金唐革紙は輸出のピークを迎え、
鹿鳴館や箱根離宮、国会議事堂などを華やかに飾りました。
その後海外で機械製による壁紙が作られるなど、新技術の登場や需要の減少によってしだいに衰退し昭和37年(1962)には、最後の製造所が閉鎖されてしまいました。
一度途絶えてしまった金唐革紙の技術を、文化財関係の美術印刷を手がけていた上田尚が依頼を受け、1985年に復元に成功。
以来、日本各地の重要文化財の壁紙を復元してきました。
こうして新たに世に送り出された作品を、一度失われた「金唐革紙」から、あらためて『蘇った』という意味を込めて「金唐紙」と呼んでいます。
※金唐紙研究所 金唐紙の歴史より抜粋
「金唐紙」は一度途絶えてしまった伝統技法が復活して作られた、とっても貴重かつ贅沢な壁紙なのです。
鹿鳴館、箱根離宮、国会議事堂と歴史的な建造物に使われていたということからもその価値の高さが分かりますね。
現在でも旧岩崎邸では復元された金唐紙が貼られているそうです。
さて、なぜその貴重な「金唐紙」が隣のビルに貼られたかというと...。
元々こちらのビルのオーナー様が芸術への造詣が深く、東京芸術劇場に施工された貴賓室の壁紙に惚れ込み同じものの制作を依頼されたそうです。
金唐紙の技法を復活させた、上田 尚氏に連絡を取ると間違いなく1990年前半に制作されたものとのことでした。ですので約30年前のものになります。
剥がす前の写真がこちら
どうですか?この輝き!
とっても重厚で豪華絢爛。今から30年以上前のものにも関わらず色褪せず光り輝いています。
剥がした壁紙の一部をいただいてきたのですが、近くで見ると、手作業でひとつひとつ丁寧に彩色されているのが分かります。
緑青のようなグリーンとゴールドの対比が美しいですね。
所々に彩色された陰影により、エンボスの立体感が協調されています。
その美しさはまるで蒔絵のよう!
実際、彩色には漆なども使われているそうです。壁紙の範疇を超えた工芸品ですよね。
質感が分かる動画も撮ってみました。
デザインネーム:田園風景
平成2年 開館した東京芸術劇場の貴賓室
天井に使われています。葡萄、柘榴、洋梨などの果実や花とともに、鳥が描かれている文様。
(紙の博物館版木ロール使用)
※金唐紙研究所 作品紹介 04-田園風景より引用
そして、なんとこのタイミングに、紙の博物館で金唐紙の企画展が開催され 早速行ってまいりました。
王子駅 飛鳥山公園内にある「紙の博物館」
この「田園風景」の版木ロールもしっかり展示されていました。
そして彩色違いのものも複数見ることができました。
※残念ながら企画展のほうは撮影NGでしたが、常設展に飾られた金唐紙・版木ロールは撮影することができました。
金唐紙は壁紙という役割を超えた、本当に美しい伝統工芸品です。
こんなに立体的なのに和紙で作られているということにも驚きます。
金唐紙ができるまでの作業工程も展示され、職人が手をかけ丁寧に作り出した至極の逸品だということが分かりました。
展示は2020年10月4日まで開催されていますので、興味のある方は足を運んでみてはいかがでしょうか。
テシードの隣に、こんなに貴重な逸品が貼ってあったというという事実に、改めて驚きました。
そして、処分する前に引き取ることができたという幸運。とても偶然とは思えません。
普段、中々お目にかかれない貴重な「金唐紙」。
思いがけない形で出会うことができた、とっても貴重な体験でした。
参照
金唐紙研究所 https://www.kinkarakami.net/